月と六ペンス
稀代の名作であることは間違いなし
☆☆☆☆☆
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何となく月と六ペンスも気になっていました。
ゴーギャンをモデルにした(定かではないようですが)お話です。
主要人物であるストリックランドがあまりに酷い人だったので
読みはじめてすぐに嫌悪感に襲われました。
きっと(女性は特に)読者の誰もがそんな印象を持つはず…
でも、そう思っていた私は
この作品の中で描かれる、
一般的な酷くつまらない女の1人にすぎなかったのかもしれません。
家族を捨て、
愛を否定し、
友を切り捨て、
「絵を描く」ことに取り憑かれた男が行きついた先。
非人道的どころか
人間の本性も本能も抉り出して、
考えさせ、
苦悩させ、
そして終いに全てを昇華させる。
この本を閉じたとき
感嘆のため息を漏らさずにはいられませんでした。
この話において、愛や恋愛はメインテーマではありません。(人間の生と言う大きな括りではメインテーマと言えるけれど)
物語の前半で女性として持っていた情熱や愛情をズタズタにされました。
(私はごくありふれた女性なので、これはとても辛かった)
それでも最後には
人が長い歴史の中で育んできた愛の本質を垣間見れたような気がしてそれはほんの少し安心しました。
全体的に重苦しく感情の掻き乱される話ですが、
「僕」の若さ故の感情の高ぶりと、
他人ゆえのシニカルな視点のおかげで、
気持ちがキツくなりすぎずに読めました。
ふぅ。